ここ最近は、MEMSから少し離れて圧電アクチュエータに関する明細書
を読んでいました。MEMSの圧電アクチュエータと言うのもありますが、
電子部品の圧電アクチュエータについて先に触れた方が
構造も簡単で、理解が深まるのではないかな、と思ったからです。
●圧電効果とは?
『胃腸の動きはセンサを飲み込んで検査–圧電素子シートでバッテリ不要、MITが開発』
https://japan.cnet.com/article/35108885/
最近こんな記事もありましたが、個人的になかなか面白い仕組みだと思っています。
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〇圧電効果:ある物質に圧力を加えることで電気が発生する現象のこと。
英語ではpiezoelectric effect。
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ある物質というのは、水晶や特定のセラミックのことです。
これらの結晶は対称性をもつ形をしており、結晶を構成するプラスイオン、
マイナスイオンは中和されています。
ここで、外からの力がかかると、真ん中に位置しているプラスイオンの位置が
相対的にずれ、物質の一方にプラスの電気が固まり、対向する方にマイナスの
電気が固まることで、電気が流れるようになります。(これを分極といいます)
●何に使われるの?
圧電効果は、あらゆるところに応用されています。
簡単に以下の図にまとめてみましたが、これ以上に活用例は沢山あります。
●圧電効果の具体的な活用例
私が読んでいた明細書には、自動車の燃料噴射装置向けの例がありました。
圧電効果を発生することのできるセラミック(圧電セラミック)を、
電極層で挟み積層させた圧電素子と、これに外部電極を合わせた
圧電アクチュエータと言うのが登場します。
実際にはこれは圧電効果ではなく、逆圧電効果と言われる現象を利用します。
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圧電効果 :力→電気
逆圧電効果:電気→力
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積層させる理由としては、
電気を流した際により大きな力を生み出すことが出来るからです。
このアクチュエータに電気を流す(電圧を印加する)と、
セラミックを挟む両端の電極を通じてセラミックにも電気が流れます。
すると、逆圧電効果によりセラミックがチョっと動きます。
この微細な動きと言うのがこの圧電セラミックの得意とするところです。
ちなみに勝手な方向に動くのではなく、プラスの電圧をかけると上方向
マイナスの電圧をかけると下方向に、と言った形で動きが生じます。
今回の例は燃料噴射装置ですので、装置先端の燃料を供給する
ノズルの開け閉めに利用されます。
自動車メーカ各社にとって、燃費向上は必須の課題ですから、エンジンの
動きに合わせて効率よく、供給する燃料の微調整が出来る噴射装置
と言うのは大変有難いはずですからね。
以上が、圧電効果の自動車への活用の具体例になります。
●圧電素子について具体的にどんな発明があるの?
ということで、今回読んだ明細書の内容を紹介したいと思います。
まず、圧電素子は、以下の構造が積み重なって構成されています。
(これはコンデンサと同じ形ですね。)
—————-電極
セラミック
—————-電極
このような構造を圧電素子は有するので、コンデンサのように
電気を貯めることが出来ます。
その場合、コンデンサ内に貯まった電気を放電する回路が必要になります。
本明細書によると、通常は、コネクタ付近にワイヤ抵抗などを加えることで
放電回路を形成しているようですが、そうすると追加のスペースが
必要になりますし、コネクタを接続する余計な工程も増えることになります。
そこで、本発明では、代わりに抵抗層を圧電素子の頭部及び/又は足部に
設けることにして、放電回路の形成と工程の簡略化を両方実現した
というわけです。しかも放電層が外側にあるおかげで、
圧電アクチュエータ全体の絶縁性も保たれるという利点もあるようです。
『放電するための抵抗層を導入する』と言うのが今回の新たな発明なんですね。
簡単にですが、説明は以上になります。
●独り言
①今回は、放電回路と言う今まで出てこなかった回路の話が出てきてその構造を
少し理解できたことは1つ学びでした。
ただ、放電回路に使われる抵抗はどうやら”ブリーダ抵抗”と
言うようなのですが、今回の明細書の英文はshunting resistor
日本語だと”シャント抵抗”です。公開訳はブリーダ抵抗になっていました。
さすがにこれは直せないな,,,と言うのが今のレベルです。
一応訳している最中にもシャント抵抗の放電用途について、念のため
調べておこうと思って調べたのですが、電流検出用途しか出てこず、
違和感は感じてはいました。ただブリーダ抵抗にはいきつかなかったなぁ。
②【公開訳】『また、縦方向で見て外側にあるピエゾ層2の表面には、電気的に絶縁された頂部3および底部4がそれぞれ1つ取り付けられている。前記頂部および底部はそれぞれ機械的にパッシブな領域であり、これらの部分によってピエゾアクチュエータ1全体を外部に対して絶縁することができる。』
これ英語でもa mechanically passive region になっているのだけれど、
機械的にパッシブなことと絶縁することは関連ないと思うんだけどなぁ。
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