質量分析のイオン化について

ここ最近の平均勉強時間は12~13H。
トライアルの合間の中休み(休みではないけれど)に分析装置をおさらい中です。

おさらいと言いつつ、これまであまりきちんと勉強してこなかった
質量分析計について取り組んでいます。

イオン化部や分離部についてまとめたり、
用語収集したり、日本語の明細書を読んだりしました。
明日は対訳収集の予定です。

ここ最近のノート


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●勉強したことのまとめ
質量分析には「イオン化」が必要であり、イオン化の種類としても
「電気イオン化」「化学イオン化」「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」など
色んなものが存在するのですが、

そもそも何故イオン化が必要なのか自分に対して上手く説明できなかったので、
ちょっと調べてみたことをまとめてみます。

まずは、質量分析計の概要についてです。

●質量分析とは
・固体、液体、気体中の分子が何かを調べること
・それらの分子量を決定すること
・分子の中にどんな原子が含まれているかを決定すること

●質量分析計の構成
大きく3つのパーツから成り立っている。
1.イオン化部
2.イオン分離部
3.検出器

ここで出てくるのがイオン化と言うワード。
検出の前にイオン化をするんですね。

●何故イオン化が必要なのか
まず、日常生活において、
自分の体重や料理に使う材料の重さを知りたい時はどうしますか?
体重計やはかりを使用しますよね。

では、宇宙でも同じように量れるでしょうか?

自分の身体は宙に浮くし、材料は飛び散るだろうし、
難しそうですよね。

何故地球上では簡単に重さを量れるのか、と言うと、
それは重力と言う力が自分や物体自体に掛かっているからです。

今回、質量分析計によって知りたいのは原子や分子の重さですね。

原子や分子も天秤に乗せて量ることができれば話は早いのですが、
そのような装置は残念ながらまだありません。
原子や分子が天秤の上でじっとしているような条件を作り出すことができないようです。

では、どうやって量れば良いのか?
重力のように物質に作用する力は他にないのでしょうか?

どうやら私たちの周りには4つの力が存在する、
と物理学では見つけられているようです。
・「重力」
・「電磁気力」
・原子核をまとめている「強い力」
・中性子がニュートリノと電子を出して陽子に変わる時などに働く「弱い力」

質量分析計では、このうち「電磁気力」を使うことにしたようです。

「電磁気力」は、原子同士を結合して分子をつくったり、
原子核と電子を結びつけて原子をつくったりする力です。

分かりやすい言い方をするとプラスとマイナスによって作用する力、
と言ったらよいかもしれません。

質量分析計では、この作用が使われます。

●質量分析の原理
磁場の掛かるイオン分離部に電荷を帯びたイオンが流れることで
「フレミングの左手の法則」にしたがって、力が発生します。

フレミングの法則の電流の流れに当たるのが、電荷を帯びたイオンの流れです。
フレミングの法則の左手の形を思い浮かべると、力は磁力に対して直角に働いていますね。

受験のミカタHPより
イオンは磁場の向きに直角に対して動く、と言うことは移動する方向が曲がるんです。
<あくまでイメージです>

でも、この力はイオンの電気量に比例するのであって、質量は関係がないんです

じゃぁどうやって質量測定ができるのか?

物体の運動が曲がると、どんな力が掛かるでしょうか。
「遠心力」が働くんですね。

この「遠心力」が、質量に比例するのです。

具体的な動きで言うと、
軽いイオンは内側を通って(=より曲げられる)、
重いイオンは外側を通ります(=あまり曲がらない)。

このように、磁場の力でイオンを曲げて、
遠心力の力で質量毎にストロークを変えることで、
異なるピークで検出器にて成分を検出することができるんです。

私たちが体重を量るのとはちょっと仕組みが違うようです。

問い「質量分析に何故イオン化が必要なのか」の答えとしては、

イオンの質量毎に異なる速さをもとにして質量を測定するために
分析装置では電磁気力を用いることから、
分析対象の原子や分子をイオン化して磁力が作用するために必要である、
と言うことですね。

【参考】
https://www.chem-agilent.com/pdf/LCMSKISOforum_Rev3_1-14.pdf

 

 

 

 

 

 

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●読んだ特許
これに関連する特許として
島津製作所の「タンデム型質量分析装置」に関する発明の特許を読みました。
[WO2017017787A1]

質量分析計の構成で言うところの
1.イオン化部
2.イオン分離部
3.検出器

2と3に関連するものになります。

発明自体を簡単にまとめると、
『質量分析装置内でイオンを開裂させる際の衝突エネルギーと
イオンの質量(実際には質量電荷比)の組み合わせ毎に
各質量分析データを取得することで、
それに基づいた高い感度のマススペクトルを得る』と言うもの。

簡単に説明すると、
タンデム型の質量分析計はこのような構造を持っています。

島津製作所HP

イオン化部でイオン化された分子が個々に入ってくると、
前段のQPロッドで、ターゲットイオンだけを通過させ、
その次のイオンガイドでターゲットイオンを開裂させ、
後段のQPロッドで特有のフラグメントイオンだけを通過させます。

このイオンガイド(=コリジョンセル)での開裂がキーとなるのですが、
それは、イオンを開裂させるための外部からの力である
衝突エネルギーの大きさに応じてイオンの開裂の態様が変化するからです。
【例】

結合は、その結合の種類や原子の種類などによって強弱がありますよね。

衝突エネルギーが小さければ、強い結合を開裂させることができませんが、
イメージ:A-B-C+衝突エネルギー10 → A(+)  B-C

衝突エネルギーが大きければ、強い結合も開裂させることができます。
イメージ:A-B-C+衝突エネルギー20 → A(+)  B  C

ちなみに、ここまでは先行技術として挙げている明細書にも乗っていることでした。

この発明ではさらに、同一の化合物に対しても衝突エネルギーを変えることで、
さらに複数のマススペクトルを得られるようにしているようです。
イメージ:A-B+衝突エネルギー10→ A(+)  B
イメージ:A-B+衝突エネルギー20→ A(+)  B ’ B”

このような衝突エネルギーと質量の組み合わせをすべて実施するよう制御するか、
もしくは、それだと時間が掛かるので、
確実に必要ない組み合わせは除外した組み合わせを用いて分析するよう制御する、
と言うのが今回の発明でした。

こんなに沢山開裂させたり組み合わせたら、
不要なイオンの干渉が問題にはならないのかな?と思ったのですが、
島津製作所のHPによると、タンデム型のMRM検出法の場合、
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目的化合物と夾雑物のフラグメントイオンが同じなので,
この2つの成分が混じった状態でQ1は通過してしまいます。
ところが,CIDで開裂させ,Q3で目的化合物のm/zとして,
夾雑物とは異なるプロダクトイオンを選ぶと,
純粋に目的化合物に関連するイオンのみのクロマトグラムが得られます。
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とのことなので、2個目のマスフィルター=Q3で、
不要なものはきちんとトラップされるということのようです。

はい、まだまだ説明が足りないところはありますが、今日はこの辺で。

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