遺伝子編集CRISPR-Casシステムを理解するための最初の一歩

CRISPR Casシステムと言う遺伝子編集技術を
ご存知でしょうか。

私が初めてこの単語を耳にしたのはJASISの講演だったのですが、
それ以来非常に気になっていた技術の1つなので、
簡単に説明してみたいと思います。

まずは最近の出来事として、数日前、
アメリカでCRISPR Casシステムを使った免疫療法の臨床試験が始まった、
とのニュースを目にしました。
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Doctors have infused cells edited using CRISPR-Cas9 into two patients in a trial conducted at the University of Pennsylvania, NPR reports today (April 16).
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中国ではCRISPR Casによる遺伝子編集技術を
すでにヒトでも試験していますが(話題の遺伝子ベビーなど)、
アメリカでは初めてのことだそうです。

注:”遺伝子編集技術”を使ったヒトでの実験は
すでにされていますが(サンガモ社)、
“CRISPR Cas技術”を使ったものが初めてと言うことです。

今回ペンシルバニア大が実施したのは、
CRISPR Cas技術を使ってT細胞の免疫力を高め、
免疫力が増強したT細胞を増やし、
それらを患者に戻して病気を治療するようです。

T細胞の免疫力を高めるとは、具体的に言うと、

・骨髄腫などのがん細胞が持つ遺伝子に結合する受容体
NY-ESO-1 TCRを患者のT細胞表面に加えて攻撃性を高めつつ、

・免疫システムの防御を止める可能性があるPD-1
と呼ばれる遺伝子を始めとする幾つかの遺伝子を取り除く、

というものです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5769084/

このような話を耳にして
個人的には何だか怖い技術が出てきたなぁ
と言う印象を持っていたのですが、

この技術は、
原核生物である古細菌の免疫機能を活用したもの、
つまり、
原始的な生物がが古来から持っていた機能がベースとなっています。

ベースとなる技術は全く新しいものではないとすると、
少し興味が湧いてきませんか??

そうして、
色んな記事や動画や本を読んでみたのですが、
(1つだと理解できなかったので…)

まずは古細菌の免疫機能について理解すると
CRISPR Casシステムも理解しやすくなるな、
と思ったので
今日はそこから説明してみたいと思います!

●古細菌がウイルスと初めて出会ったら
CRISPR Casシステムは、
DNA領域であるCRISPR領域と、
cas遺伝子によって作られるCasタンパク質で構成されています。

CRISPRは、
clustered regularly interspaced short palindromic repeat
の略で、
「集まって規則的に間を空けて配置された短い回文配列の繰り返し」
と日本語では訳されていますが
これだけ読んでもよく分からないですよね。

どういうことか、古細菌の中を見てみましょう。

上の図の長方形は古細菌で、
中にある黒い一本線はDNAです。

赤い部分がCRISPR DNAに特徴的な
繰り返し配列部分であり、

その配列は、
TCCCCGC(赤い部分①)
少し間を空けて、
GCGGGGA(赤い部分②)
というような配列になっています。

A-C、G-Tで塩基対が形成されるので、
TCCCCGCとGCGGGGAは、
真ん中で折りたたむときれいに対になります。

この2つをまとめて、
左から読んでも右から読んでも結局同じと言うことで
「回文」と表現しているのです。
※ここは理解できなくても問題ありません。

「集まって規則的に間を空けて配置された短い回文配列の繰り返し」
部分と言うイメージが少し掴めたでしょうか。

この古細菌の中に、
外部から知らないウイルスが入ってくると、
そのウイルスの遺伝子配列が
CRISPR DNA配列の間に保存されます。

これが、古細菌の免疫記憶機能です。

●古細菌がウイルスと再び出会ったら
同じウイルスが再び入ってくると、
CRISPR DNA配列がウイルス配列を認識し、
ウイルスに結合します。

また、遺伝子のはさみであるCasタンパク質も
CRISPRと一緒に動き、
ウイルスを認識して切断します。

切断されたウイルスは機能しないので、
古細菌は感染せずに守られたことになります。

これが古細菌の獲得免疫機能です。
●CRISPR Casシステムの簡単な概要

では、
先ほどのCRISPR配列+ウイルスゲノム配列の
ウイルスゲノム配列を切断し、

ある病気の原因となるような遺伝子配列に
相補的な配列に変えたらどうなるでしょうか?

病因遺伝子に特異的に結合する遺伝子が
できそうですよね。

結合したら、
Casがはさみとして標的遺伝子を切断してくれます。

これが、
CRISPR Casシステムが任意の領域を切断できる
と言われている仕組みです。

この技術を応用して、
最初に紹介したペンシルバニア大学での研究では、
PD-1を発現する遺伝子を切断しているのだと思われます。

いかがでしょうか。
CRISPR Casについて抵抗感はなくなってきたでしょうか。

以下に、
もっと知りたいと思えてきた方のために、
幾つかオススメの動画をご紹介しておきます。

一応、紹介している倍以上の数の動画を見た
(なかなか理解できなかったので)中で
これは良かったと思うものを挙げていますので、
是非見てみてください。

●オススメ動画
・とりあえず日本語で理解したい場合
物足りないけど概要を理解するには良い。

・英語でも良いから短時間で理解したい人向け
CRISPとCasの連携の仕組みが分かりやすい。

・英語でも良いからしっかり理解したい人向け(1番オススメ)
CRISPR関連の明細書に出てくる背景技術まで理解するのに役立ちます。

●負の側面
非常に簡単にCRISPR Casシステムについて説明しましたが、
この技術には未だ不確かな部分が残されていると言うことも
認識しておかなければいけないかなと思います。

詳しい説明は長くなるので今回は避けますが、

最近のNatureやScienceの記事でも
CRISPRシステムに起因する突然変異の可能性などの
オフターゲット効果について言及していますので、
興味のある方は以下英語ですが読んでみてください。

Transcriptome-wide off-target RNA editing induced by CRISPR-guided DNA base editors
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Here we show that a CBE with rAPOBEC1 can cause extensive transcriptome-wide RNA cytosine deamination in human cells, inducing tens of thousands of C-to-uracil (U) edits with frequencies ranging from 0.07% to 100% in 38%–58% of expressed genes.
———————————-
Powerful CRISPR cousin accidentally mutates RNA while editing DNA target
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But the weaknesses of base editors have become increasingly apparent, and a new study shows they can also accidentally mutate the strands of RNA that help build proteins or perform other key cellular tasks.
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