辞書にない訳し方 seed

Essential免疫学の原書を使った勉強②

Essential免疫学を使った勉強の気付きをまた1つご紹介します。
使っているのはこちらの本です。

 
15章の移植に関する分野なのですが、その中にこのような一文がありました。

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The patient is also given immunosuppressive drugs and antibodies
that prevent rejection of the graft and
allow the hematopoietic stem cells to seed the bone marrow,
where they divide and differentiate. 【原書P.467】
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このseed何て訳すのがベストなのだろうか、と一瞬固まってしまいました。

seedの一般的な訳し方

これまで読んできたバイオ関連の文章では、
seedは、細胞培養実験の際に、「細胞を増やすために培地にseedする」と言った
使われ方がされているのをよく見かけました。

この際は、seedは「播種」と訳すことが多いかなと思います。

ですが今回は、細胞培養ではありません。

本文脈における状況

広い意味で言えば細胞培養と言えるのかもしれませんが、
この文章に描かれている状況としては、
体内に造血幹細胞を入れて、骨髄内で造血幹細胞を増殖させようとしています。

この場合の患者は、血液がんや免疫不全症などを患っているため、
異常な腫瘍や白血球を持っています。

これらを取り除き、代わりに健康なドナーからリンパ球をもらって、
それを定着させようとしているのです。

思考過程

試しに、『”播種” ”造血幹細胞”』で検索してみましたが、
やはりこの文脈で播種は使われていないようでした。

ちなみに、Essential免疫学の日本語版はどうなっているかと言うと、
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移植細胞の拒絶を防止し、造血幹細胞が骨髄に定着して
分裂・分化できるように、免疫抑制剤と抗体が患者に投与される。【日本語版P.464】
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定着となっています。

確かに、この文脈には「定着」が合っているように思いますが、
もし特許翻訳の仕事だったとしたら、
同じような文脈で「seed」が出てきたとして、「定着」と訳すと
ちょっと意訳し過ぎになるのではないかな、と思いました。。。

結論

私なりに考えた結果としては、
今回は「seed=移植」と訳すのが良いのではないかと思いました。

seedの元の意味を活かしつつ、原文に沿った形にしたつもりです。
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The patient is also given immunosuppressive drugs and antibodies
that prevent rejection of the graft and
allow the hematopoietic stem cells to seed the bone marrow,
where they divide and differentiate.
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移植細胞の拒絶を防止し、造血幹細胞が骨髄に移植され
分裂・分化できるように、免疫抑制剤と抗体が患者に投与される。
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ただ私の訳し方だと若干文法を無視してしまっているので、
どっちもどっちかもしれませんね…。

結論としては曖昧にはなってしまいましたが、
考え方の参考になれば幸いです。

※seedの使い方の注意

同時に気付いたことなのですが、
seedは前置詞を取らず、
seed A」=「Aに種を播く」と言う意味になるんですね。
seed toとかseed intoにはならないので、英訳の際には要注意です。

また、和訳の際に「Aを播く」としないようにも注意が必要ですが、
これは文脈で判断できるのでおそらく大丈夫でしょう。

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【参照】
国立がん研究センターHPより
Essential免疫学第3版
The Immune System 4th Edition

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