今回は英文明細書の記載に沿って説明してみたいと思います。
まず始めに補体とは
“生体が病原体を排除する際に抗体および貪食細胞を補助する
免疫システム (補体系) を構成するタンパク質”です。
Wikipediaより
生体が病原体を排除する物質には、有名なもので言うと
「白血球」が挙げられます。
補体は、この白血球の一種である好中球やマクロファージなどが
病原体や細菌を食べる食作用を補佐する役割を持ちます。
「補体の活性化」が何のために必要か、と言うと
病原体から身体を守るためですね。
体内に侵入してきた細菌に抗体が結合すると、
補体は抗体により活性化され、
細菌の細胞膜を壊すなどして身体を守ります。
この活性化経路が複雑で、
詳しくは以下のyoutube動画が一番分かりやすいと思います
とりあえずは、
「色んな補体が連鎖して結合していって、
最後に細胞膜に穴が開いて細菌が外に出ていく」
と言うことを認識するのが最初の一歩としては大事かなと思いました。
(自分の勉強の過程では、ゴールが見えないまま反応の説明だけが
ズラズラと続く解説が多くて、かなり理解に苦しみました…。)
さて、今回勉強した箇所を特許の明細書中で説明しているものがちょうどあったので、
英文で読んでみたいと思います。
英文の下に日本語を書いていますが、訳す、と言うよりかは
その状況を自分の言葉で描写する、と言うことを意識しているので、
100%一致するような訳にはしていません。
こちらの特許US20120225056A1のBACKGROUNDを参照しました。
The CP C3 convertase is formed upon interaction of complement component C1, which is a complex of C1q, C1r, and C1s, with an antibody that is bound to a target antigen (e.g., a microbial antigen).
この文章中のCPは、classical pathwayのことで、
日本語だと「古典的経路」と呼ばれる活性化経路の1つです。
参考として下の図を挙げておきます。
最終的には同じ経路に到達するのですが、その過程には
「古典経路」「第二経路」「レクチン経路」の3つの活性化経路が存在する、
と言うことが分かります。
http://iahealth.net/complement-system/
先ほどの英文では、「C1が、抗原に結合した抗体と相互作用することで
C3転換酵素(convertase)が形成される」と言うことを言っています。
とりあえず先に進みます。
The binding of the C1q portion of C1 to the antibody-antigen complex causes a conformational change in C1 that activates C1r.
Active C1r then cleaves the C1-associated C1s to thereby generate an active serine protease.
C1qが抗体に結合すると、C1が構造変化してC1rが活性化して、
活性化したC1rは、C1sを切断して、活性化したセリンプロテアーゼを生じます。
なんの話をしている….となりそうな文章ですが、
イメージとしてはこんな感じです。
Slide share
先ほど、
「C1が、抗原に結合した抗体と相互作用することで
C3転換酵素(convertase)が形成される」とありましたが、
それは全体像の話をしていて、より細かく描写しているのが今回の文章で
①C1qが抗体に結合する
②それによりC1rが活性化
③活性化したC1rがC1sを切断
と言う流れになっています。
C1-associated C1sをどう訳すかですが、
図にある構造だけを見て考えると、「C1を構成するC1s」と言うことかと思います。
associateですからちょっと悩みますね。
先に進みます。
Active C1s cleaves complement component C4 into C4b and C4a.
④活性化したC1sは今度はC4を切断するんですね。
Like C3b, the newly generated C4b fragment contains a highly reactive thiol that readily forms amide or ester bonds with suitable molecules on a target surface (e.g., a microbial cell surface).
⑤C4が切断されることで、フラグメント化されたC4bが細胞表面に結合します。
<イメージ>
C1s also cleaves complement component C2 into C2b and C2a.
The complex formed by C4b and C2a is the CP C3 convertase, which is capable of processing C3 into C3a and C3b.
同じことを繰り返して、C2もC2aとC2bに分解されて、
さっきのフラグメント化されたC4bと、今回分解されたC2aの複合体が形成されます。
※C2も先ほどのC4と同じように外部から現れます。
で、このC4bとC2aの複合体が、C3転換酵素になります。
The CP C5 convertase—C4b, C2a, C3b—is formed upon addition of a C3b monomer to the CP C3 convertase. (See, e.g., Müller-Eberhard (1988), supra and Cooper et al. (1970) J Exp Med 132:775-793.)
そして、次にC3から切断されたC3bが先ほどのC3転換酵素(=C4bとC2aの複合体)に
結合してC5転換酵素(C4bC2aC3b複合体)が形成されます。
*どんどん進んでいきましたが、イメージとしては、先ほどの細胞上のC4に、
どんどんC2a、C3bが結合して言っている感じです。
ここでちょっと話が変わります。
In addition to its role in C3 and C5 convertases, C3b also functions as an opsonin through its interaction with complement receptors present on the surfaces of antigen-presenting cells such as macrophages and dendritic cells.
C5転換酵素が次に何をするのか、と言う話に展開していくかと思いきや、
ここで、活性化経路の要素の1つである補体C3bが、
「オプソニン」としてはたらくことができるということを説明し始めました。
オプソニンは、マクロファージなどの食作用のある免疫細胞が、
さらに病原体などを食べやすいようにする効果があるんですね。
調味料のようなものです。
補体C3bが病原体などに結合すると、
マクロファージが食べやすくなる、と言うことです。
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とりあえず今日は前半編と言うことで、ここまでにしたいと思います。
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【今日の勉強記録】
13H
・Essential 免疫学
・大学生物学の教科書「細胞生物学」
・ELISA関連特許を読む
・ビデオ講座 AIについて
・「精神と物質」読了
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