of の訳し方(1/26修正)

今日は請求項の訳に入る前に見直しをしていたのですが、
幾つか気になる点が見つかったので1つ取り上げたいと思います。
In addition, fastening or adhering a conventional strain gage to the MEMS device may actually increase the strength of the MEMS device,
thereby reducing stress in the MEMS device…【US6739199】

まずはイメージ図
明細書にも図面はありますが、立体ではないのでイメージが湧きにくいです。
ネット上で探したところ見つけたのがこの画像。

MEMSにどのようにゲージが搭載されているのか立体的に描かれているので
分かりやすいです。

参照元

本題
問題はこの文章です。
——————————————————————————————————–
In addition, fastening or adhering a conventional strain gage to the MEMS device
may actually increase the strength of the MEMS device,
thereby reducing stress in the MEMS device…
【初回】
加えて、MEMSデバイスに従来のひずみゲージを固定または接合すること
によって、実際にMEMSデバイスの力を増加する可能性があり、これにより
MEMSデバイスの応力が低下する
【見直し後】
加えて、MEMSデバイスに従来のひずみゲージを固定または接合すること
によって、事実上MEMSデバイスにかかる力が増加する可能性があり、
これによりMEMSデバイスの応力が低下する
【再見直し後】
加えて、MEMSデバイスに従来のひずみゲージを固定または接合すること
によって、事実上MEMSデバイスの強度が増加する可能性があり、
これによりMEMSデバイスの応力が低下する

——————————————————————————————————–

①「MEMSにゲージをくっつけるとstrength of the MEMS deviceが増加する」
②「strength of the MEMS deviceが増加すると、MEMSデバイスの応力が低下する」
と言うことを言っています。

ひずみゲージは測定用のものなので、MEMSにひずみゲージをつけるのは何らかの測定
目的であることは明細書を読まなくても明らかです。

「MEMSにゲージをくっつけるとMEMSデバイスの力が増加する
と訳すと、なんだかMEMSの何らかの力が強くなった感じがするので、
よろしくなさそうです。

【かかった力と言う訳は成り立つのか】
なので「MEMSにゲージをくっつけることによりMEMSデバイスにかかった力ではないか」、と仮定します。

そこで念のため
「MEMSデバイスにかかった力が増加すると、MEMSデバイスの応力が低下する」
は成り立つのか?と言うことを検証してみます。

はじめに、応力の意味について確認しておきます。
———————————————————————————————————
物体の内部に考えた任意の単位面積を通して、その両側の物体部分が
互いに相手に及ぼす力をその面に関する応力という。
[理化学辞典第5版] ———————————————————————————————————
この説明だとちょっとよく分からなかったです…。

次にネット上で調べて見ました。
———————————————————————————————————
応力とは単位面積当たりの内力のことである。
物体に力を加えると言うが、その意味は、物体に外部から力を作用させることであり、
このような力を外力と呼ぶ。
応力とはこの外力の作用に応じて物体内部に生ずる力、すなわち内力、
の単位面積当たりの量なのである。(「よくわかる材料力学」、9 ページ)
———————————————————————————————————
リンクより

この説明によると、
応力とは外力の作用に応じて物体内部に生ずる力、
すなわち内力、の単位面積当たりの量
」です。

内力と外力は作用・反作用の関係にあるということですね。
その内力を面積で割ったのが応力なので、
外力の作用によって応力が生じると言うのも成り立つと言えるでしょう。

と言うことは、
the strength of the MEMS device→外力
stress in the MEMS device→内力(応力)
と言う関係であれば文章的に成立するのではないでしょうか。
なので、先に記載したように、
——————————————————————————————————
加えて、MEMSデバイスに従来のひずみゲージを固定または接合すること
によって、事実上MEMSデバイスにかかる力が増加する可能性があり、
これによりMEMSデバイスの応力が低下する
——————————————————————————————————
strength of the MEMS device=MEMSデバイスにかかる力
が良いのでは、と思います。

↑1/25の時点
↓1/26更新
=======================================
strength of the MEMS device=MEMSデバイスにかかる力
が良いのでは、と思いましたが、

内力(応力)と外力が作用・反作用の関係であるならば、
外力が増加すると、応力も増加しないとおかしいですよね。
(↑昨日自分で作用・反作用と言っていながら…)

内力(応力)と外力(ひずみ)の関係の図

機械設計エンジニアの基礎知識より

なので、「かかる力」と言う訳も当てはまらなさそうです。

そもそもforceとstrengthは別物です。
(↑ここに昨日は意識が向かなかったのが一番の失敗)

力と強度 wikipediaの説明が分かりやすかったので引用します。
—————————————————————————
力 :物体の状態を変化させる原因となる作用。[wikipedia] 英語ではforce。
In physics, a force is any interaction that,
when unopposed, will change the motion of an object.[wikipedia]

強度:その材料が持つ、変形や破壊に対する抵抗力[wikipedia] 英語では、strength。
Strength, ability to withstand an applied stress without failure[wikipedia] —————————————————————————

では、今回の文脈で「MEMSの強度が増す」というのはどういうことか?
「たわんだり歪んだりするMEMSのカンチレバー上に、
ひずみゲージがくっつくとMEMSの強度が増す」→?

正直言葉だけだとしっくりこないので(私だけかもしれませんが)、
イメージをしてみます。

*MEMSのカンチレバー=プールの飛び込み台
*ひずみゲージ=プール台の上に固定された薄い板

このようなイメージを持つと、
固定された薄板によって飛び込み台が変形しにくくなった
→飛び込み台の強度が増加した
→飛び込み台の応力が低下した

という状態がイメージできます。

ちなみに
*MEMSのカンチレバー:プールの飛び込み台
*ひずみゲージ:プール台の上に寝そべった人間

このようなイメージを持つと、
人の体重で飛び込み台が歪む
→外から力がかかっている
→飛び込み台にかかる力が増加した
→飛び込み台の応力も増加する。(場合によっては降伏点を超えて戻らなくなる)

と別の現象が先行していってしまいますので要注意。
(そしたら英文側とつじつまが合わないので気付くとは思いますが、
気付かなかった人がここに…)

で、本日の結論としては、
——————————————————————————————————–
In addition, fastening or adhering a conventional strain gage to the MEMS device
may actually increase the strength of the MEMS device,
thereby reducing stress in the MEMS device…
【再見直し後】
加えて、MEMSデバイスに従来のひずみゲージを固定または接合すること
によって、事実上MEMSデバイスの強度が増加する可能性があり、
これによりMEMSデバイスの応力が低下する
——————————————————————————————————–

が良いのではないか、と思いました。

4 COMMENTS

tanaka

管理人様
ありがとうございました..!
また課題・反省点が沢山見つかりました。
(あり過ぎて書ききれない…)

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください