がんにも再生医療にも関係するテロメラーゼとは

tanakaです。

「ヒトの分子遺伝学」での勉強を開始しました。

昨日から1日0.8章くらいのスピードで進めていて、
今日は第2章 染色体の構造と機能
に入りました。

今日勉強した中でも特に

テロメラーゼがめちゃくちゃ興味深い!
と思ったので、取り上げてみようと思います。

●がんにも再生医療にも関係するテロメラーゼ

美味しそうな名前をしていますが、

テロメラーゼとは、簡単に言うと、

細胞分裂のたびに短くなる細胞を
伸ばす働きをする酵素

のことです。

細胞は細胞分裂する度に短くなります。

細胞は短くなると特定の疾患を発症する可能性があり、
年を取ると病気になったりするのは
この細胞の短小化が関係している場合があるようです。

これは、
細胞分裂により短くなるのが、
テロメアと呼ばれる
細胞の末端を保護している部分だからです。

テロメアの最小化は細胞分裂の回数によって影響されるため、
細胞老化とも関係しているといわれています。

完全に短くなってしまうと、
その細胞は死んでしまうことになります。
(細胞分裂の毎に
細胞が再生する一方で身を削っていく様子は、
マッチ売りの少女のようですね・・・)

さて本題のテロメラーゼです。

・ほとんどのがん細胞に存在するテロメラーゼ
先ほど、
細胞は短くなって死んでしまう話をしましたが、
「がん細胞は死なない」
と言われることがありますよね。

これにはテロメラーゼが関係しています。

細胞の染色体末端のテロメア部分の
アミノ酸配列を確認すると、
GGGGTTと言った規則的な並びが連続しています。

これが、テロメア反復配列(GGGGTT)です。

多くのがんは、
テロメラーゼを発現しているのですが、

テロメラーゼは、
この反復配列に対応するアミノ酸配列となる
RNA配列(CCCCAA)を含むため、

短くなった配列箇所にテロメラーゼが接近すると、
配列を補充してくれるんですね。

これにより、短くなったがん細胞が延伸し、
短小化を防ぐことができます。
参照:http://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~jnakayam/_src/sc734/pubj12.pdf

この結果、いつまでもがん細胞が短くならず、
生き延び続けられるんですね。

憎まれっ子を長生きさせるなんて
なんてことを…という気がしてきますが、

テロメラーゼは、
私たちの身体の成長にも役立っているのですよ。

・幹細胞にも存在するテロメラーゼ
幹細胞にもテロメラーゼが発現しています。

幹細胞は、
組織や臓器に成長する元となる細胞です。

全く同じ細胞を作ったり、別の細胞を作って、
皮膚や筋肉を修復したり、
血液を作り出したりする重要な細胞のことで、
再生医療に関わるiPS細胞も、人工的な幹細胞の一種です。

普通の体細胞はテロメラーゼを欠いているため、
細胞分裂の度にテロメアが短くなってしまいますが、

幹細胞ではテロメラーゼにより、
テロメアの長さが維持され
細胞分裂が続く
ようになっています。

怪我した皮膚が再生されるのもまた、
テロメラーゼが機能しているからなのですね。

がん細胞が死なないのもテロメラーゼのおかげ(せい)、
iPS細胞などの幹細胞が成長し続けられるのもテロメラーゼのおかげ

というわけです。

●論文が明かすテロメラーゼの効果

テロメラーゼについて調べると
色んな興味深い論文が出てきました。
・高血圧症患者は、正常血圧患者におけるよりもテロメア長が有意に短い。
また、5年以内に冠動脈疾患を発症した高血圧患者は、
冠動脈疾患を発症しなかった高血圧患者よりもさらに短いテロメアを有していた。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/HYPERTENSIONAHA.108.123752

・ストレス・生活習慣改善によりテロメラーゼの発現が向上
48名のステージⅠの高血圧のアフリカ系アメリカ人の男女を集め、
超越瞑想と基礎的な健康教育を受けるグループ(ストレス低減グループ)と
広範な健康教育を受けるグループとに分けたところ、
どちらもテロメラーゼ遺伝子発現の向上が見られた。
https://journals.plos.org/plosone/article%3Fid=10.1371/journal.pone.0142689

・テロメラーゼの若返りプロセス
テロメラーゼを欠くように設計されたマウスは
テロメアが短くなるのが早く、老化が早く進むが、
テロメラーゼを戻したとき、そのマウスが健康に戻った。
https://www.nature.com/news/2010/101128/full/news.2010.635.html

私たちの病気にも健康維持にも若返り!?にも
テロメラーゼが影響しているようです。

成長の持続を助ける働きを持つのが
テロメラーゼですので、
若返りに繋がる、と言われても
なんとなく納得は出来ますね。

テロメラーゼの若返りに関しては、なんと商品化もされていました。

●なんとテロメラーゼ配合化粧品も…

”「defytime the First」は、
世界の高級フェイスクリームに配合されている成分に加え、
テロメラーゼ誘導活性化物質【TAM】を配合し、
加齢に伴う肌老化ケアのハイクラス・エイジングケア・クリームです。”

とのこと。効果はいかほどに。

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テロメラーゼに関する研究は、
すでに2009年に
ノーベル生理学・医学賞に選ばれており、

テロメラーゼ阻害剤という
抗がん薬の開発がされていたり、

アンチエイジング技術として注目されていたりするので、

これからも気にしていきたいですね。

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