『標識』に関する特許を読み始めました。
細胞内のタンパク質やDNAに目印をつけて、見える化するための手法です。
今読んでいる特許の背景知識となる部分ですが、
簡単にまとめてみたいと思います。
・「標識」は何に使われるのか
現在主に読んでいるのがコニカミノルタ社の特許なのですが、例えば
細胞を標識することで異常を検知し、がんの発見に活用されているようです。
JPA_2017026375など
ちなみにコニカミノルタ社はプリンターメーカーというイメージですが、
プリンターに使われる写真フィルムの粒子技術を活かして
細胞の染色に使われる、蛍光ナノ粒子を開発されているようですね。
コニカミノルタ社HP
「免疫染色」と言うキーワードでJplatpatで検索すると、
コニカミノルタ社の特許がかなりヒットします。
・どんな特許なのか
こちらの特許で対象としているのは、
がんの予測マーカーである”HER2遺伝子”を検出するための方法です。
簡単にHER2遺伝子について説明すると、
正常細胞においては、増殖、分化などの細胞機能調節に関与しているのですが、
変異が起こると、がん遺伝子として働くようになってしまうのがHER2遺伝子です。
乳がんinfoナビより
異常なHER2遺伝子は、過剰に増幅し、タンパク質の過剰発現が見られるようです。
胃がんや乳がんについては、
HER2型がんに対する抗体医薬品「ハーセプチン」がジェネンテック社によりすでに創薬されています。
そのため、HER2遺伝子の異常検知を迅速かつ的確に行える検査方法と言うのは、
早い段階で効果的な抗体薬治療を行うために大切である、と言うことですね。
・検査方法の種類
HER2の検査法としては、このくらいあるようですが、
参照:免疫染色法とFISH法が最も使用されているようです。
HER2検査ガイド
タンパク質を染色するのが免疫染色法で、
DNAを染色するものが、FISH法が含まれるISH法になります。
・FISH法について
今回はFISH法について取り上げてみたいと思います。
FISH法とは、略さないで言うと、蛍光in situハイブリダイゼーション法です。
『蛍光物質や酵素などで標識したオリゴヌクレオチドプローブを用い、
目的の遺伝子とハイブリダイゼーションさせ蛍光顕微鏡で検出する手法である。』
と定義されています。
工程に沿って簡単に表すと、以下の通りです。
①検出したいDNAを用意する
②DNAを熱処理によって1本鎖にする
③相補的なプローブDNA(蛍光標識がついている)と検出対象のDNAを混ぜる
④温度を冷やすと、相補的なDNAと検出対象DNAが結合する
(ハイブリダイゼーション)
他のISH法との違いは、蛍光色素の放出する光によって検出するところです。
工程の中で、2工程だけ取り上げてみたいと思います。
*アニーリング工程
まず②の工程に注目したいと思いますが、
熱処理によってDNAが1本鎖になる理由は、DNAが「水素結合」で結びついており、
『温度を上げると分子の運動が活発になるので結合も緩まる』からでした。
氷の温度が上がって水になるのと同じですね。
http://nsgene-lab.jp/dna_structure/hydrogen-bond/
この熱処理工程のことをアニーリングと呼ぶわけですが、
半導体の製造工程にもアニーリング工程ってありますよね。
あれは、簡単に言うと半導体を作るために不純物イオンを注入した際に、
Si基板にイオンが入り込んだことでばらばらになってしまった原子群を
整列させるという目的で行う工程でした。温度は1000℃以上になります。
今回のアニール工程は、逆にDNAを2本鎖に分ける目的で行われるもので、
温度はものにもよりますが、60℃~90℃くらいの印象です。
用途も温度も大分違いますね
*④ハイブリダイゼーション
④のハイブリタイゼーション工程では、
アニール時より温度を下げることによって、
水素結合が再びはたらくようになるために結合させることができます。
急激に温度を下げ過ぎるとDNAとプローブがちょっと近づいただけで
結合してしまう中途半端な形が出来上がってしまう可能性があるので、
少しずつ温度を下げる必要があります。
(少しずつって言うのが不器用な私には難しいんだろうなと思います…)
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何故蛍光が見えるのか、と言うのも物理の話と絡めて語りたいところではありますが、
FISH法の概要が掴めてきたところで今回は止めておきます…。
今日はこの辺で。
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